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ゆとり教育の失敗がついに明らかになり、今後への模索が続いています。教育に関しては素人ながら、疑問に思っていたことがあ
ります。それはゆとり教育を実行する前に、なぜサンプル実験をしなかったのかということです。
ゆとり教育は、学習内容を3割削減したり、生徒が自発的に総合的な課題学習を行う総合学習の導入などがあるが、詳しいことは知りません。教科書の薄さや、円周率を3と教えることが学習内容の貧弱さを象徴することとして採り上げられ
ます。
2003年のOECD生徒の学習到達度調査(PISA)、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)による国際学力比較調査によって、日本の15歳の生徒の学習到達度の順位が大きく下がったこと判明し
ました。また他の多くの調査によっても、学力低下はほぼ確実と考えられるようになりました。
学習内容の3割削減などという冒険的な変更は、学力が向上する、あるいは少なくとも低下はしないという予想のもとで実施されたのでしょう。しかし、その予想には信頼できる裏づけがあったのだろうか、大いに疑問で
す。
ゆとり教育について、立花隆氏は、文科省は頭がおかしいと言ったが、メディアや学者も似たようなものではないでしょうか。
自然科学の分野における因果関係の解明は社会科学の分野に比べると簡単ですが、それでも実験は欠かせない手段です。化学装置や機械の分野でも「やってみなけりゃわからん」ということがいっぱいあ
ります。
教育は複雑な分野であり、実験なしに結果を予想することは極めて難しいことです。
「やってみなけりゃわからん」ことをテストもせずに、国を挙げてやったのであれば、そのこと自体が大きな問題だと思います。そのおかげで数百万人の生徒の学力が低下したとしたら、大きな損失で
す。
結果が大きな影響もつ重要な問題はサンプル実験をするのがふつうです。プラントではまず小規模のテストプラントをつくって実験し、それから実証プラントとへ進む。新薬でも少数
の対象者による治験を経て一般の使用が認められる。
教育でのサンプル実験は実験校と対照校を同時比較できますから、サンプルの選定さえ間違えなければ信頼できる結果が得られます。
今回のように日本中を実験台にしたのでは対照群がないので、結果の検証すら難しいことになります。
現在の日本は豊かな生活を享受していますが、それは輸出企業の強い競争力のおかげでです。自動車・電機・機械・精密の四業種で輸出総額の約70パーセントを占め、上位30社の輸出額は輸出総額の50パーセント程にも達
します。
学力は競争力の源泉です。
とくに数学・理科の学力低下は国力の低下に直結します。近隣諸国の競争力の向上が目覚しいときに、大規模な学力低下は深刻な問題です。
各地にある教育大付属の小中学校は教育実験の場として既に用意されています。なぜ文科省もメディアも教育学者もサンプル実験を考えなかったのか、私には不可解で
す。
文科省の寺脇研氏らが主導したとされるゆとり教育ですが、国全体を実験台にするような無謀な計画がなぜ実施されたのか、たいへん不思議です。そして失敗が明白になっても、誰も責任をとらない
仕組みも問題です。 |
